「星ひとつの思い出と」で始まる<星を数える夜>、
<序詞>の最初の一節である「死ぬ日まで空を仰ぎ、一点の恥じなきことを」
非常になじみ深い詩人、尹東柱。
詩人の尹東柱は、延禧専門学校の文科に在学中、鐘路区楼上洞にある
小説家キム・ソンの家で下宿生活をし、仁王山に登りインスピレーションを受けたという。
そのような逸話をもとに鐘路区は仁王山裾の路地の入口に捨てられた
青雲水道加圧場と水タンクを改造して<尹東柱文学館>を建てた。
付岩洞に上がっていく道の横に続く小さい路地の入口。
決して華やかではない<尹東柱文学館>が立っている。
<尹東柱文学館>を偶然見つかった加圧場に建てたのには格別な理由がある。
遅い水の流れに圧力を加えて、再び力強く流れるように促す
加圧場のように、尹東柱の詩に込められた美しい刺激が私たちの魂の流れを整え、
新しく流れるようにしてくれるというメッセージを込めたという。
文学館に入って一番最初に目につくのは、田舎の井戸を運んできたような
古い木材の井戸だ。特別な説明を聞かなくても詩<自画像>の背景であると分かるが、実際に尹東柱の故郷である明東村から直接運んできたという。
また、一方の壁には幼年期から大学時代までの原稿と写真が展示されている。
第1展示室は撮影が禁止されており、スマートフォンを覗いたり写真を撮ることに追われずに
ゆっくり尹東柱の詩の世界を垣間見ることができる。
廃棄された水タンクの上の部分を解放し、水の痕跡を壁にそのまま残した
第2展示室を過ぎて、水タンクを保存して沈黙と思索の空間に変貌を遂げた
第3展示室に行くと、詩人の人生と詩の世界を表現した映像を観賞することができる。
映像を観賞した後は、文学館の左側にのびた階段を登ると、
詩人の丘へと続く遊歩道が広がっている。
蒼く生い茂った草花とそれぞれ異なる姿を見せる木々の間を歩くと
高くそびえるビルと古い建物が共存する山の麓の路地とはまた違った魅力を感じる空間だ。
どの季節でも良い。山中の路地の入口に位置して目立たず、
ソウルの魅力と詩の美しさを余すことなく抱いている尹東柱の
星を数える路地で、過ぎ去る季節を味わってみてはどうか。
季節へ過ぎていく空は
秋ですっかり満ち溢れている。
私はなんの心配もなく
秋の星を数えるようだ。
星ひとつに思い出と
星ひとつに愛と
星ひとつに寂しさと
星ひとつに憧れと
星ひとつに詩と
星ひとつにお母さん、お母さん
尹東柱の詩<星を数える夜>
<尹東柱文学館>
ソウル市鐘路区彰義門路119
火~日10:00~18:00(毎週月曜日、1ヶ月/1日、旧正月/秋夕連休)
お問い合わせ:+82-2-2148-4175
文/フリーライター リュ・ミンジョン